にせのブログ

@2_s_eが行先表示、方向幕について浅い知識をひけらかすブログ

続 阪神方向幕フォント違いの解説

にせです。1年前、阪神方向幕のフォントが2種類あることを発見し記事にしました。

記事を書いたのは発見から間もない時期でしたが、この1年間で実態、そして新たな謎がわかってきたので今回また改めて記事にすることにしました。

概要

まず改めてですが2つのフォントの違いについて説明します。

阪神の幕車の英字フォントは二種類あります。上の画像左のSが旧フォントと私が呼んでいるもの、右が新フォントと呼んでいるものです。なお私はいつもSで区別をつけていますが、S以外の英字、日本語も旧フォントと新フォントで差異があるので注意が必要です。

新フォントは青胴車では遅くとも2015年頃から、赤胴車では2016年の改正対応幕以降登場しています。*1旧フォントと新フォントの使い分けは編成単位ではなく1両の山側海側ごとで行われています。旧フォントと新フォントの勢力関係は赤胴車青胴車で異なっています。

赤胴車ではまだ旧フォントの方が多数派です。新フォントは一編成の中に少なくとも1ヵ所はあるくらいの感覚です。昨年発見した当時は希少なものだと思い全数調査をするつもりでしたが意外に数が多かったので中止しました。

赤胴車の新旧特急須磨浦公園幕。英字のほか急の字や公の字も異なっています。

一方青胴車では5017Fの3号車片側を除き消滅しています。しかし2015年頃に全ての幕を取り換える必要のあるダイヤ改正は行われておらず、なぜ急速に青胴車から旧フォントが消えたのか謎が深まります。

青胴車の新旧西九条幕。西九条幕は間違いなく使われませんが律義に新フォント対応しています。

旧フォントと新フォントの判別方法

旧フォントと新フォントを見分ける一番簡単な方法はSの字を見ることです。種別、行先にSが含まれる場合は簡単に見分けがつきます。以下の対照表のうち太字のコマはSで判別可能、薄い灰色のコマはS以外で判別可能、濃い灰色のコマは現状判別困難なコマです。ここでは薄い灰色のコマの判別方法を紹介します。

阪神』梅田行き

ネの4画目と申が繋がっていれば新フォント、離れていれば旧フォントです。赤直特、黄直特どちらも共通の見分け方です。

姫路行き

足と各の1画目の間に隙間がなければ旧フォント、隙間があれば新フォントです。赤直特、黄直特どちらも共通の見分け方です。

梅田・御影・元町行き

Vの字の底が|の底と同じ高さなら旧フォント、少し浮いていれば新フォントです。*2

 

以上です。赤胴車の種別単体と青胴車の新フォント臨時単体、普通単体は今のところ資料不足で正確な区別がつきません。

時系列の謎

青胴車は2015年頃に刷り直した際、2013年の三宮駅改称とマクロン*3廃止に対応しませんでした。編成内に神戸三宮表記と三宮表記、またマクロンの有無が混じることを嫌いフォントの仕様だけ変えたのでしょうか?

また赤胴車青胴車新フォントが確認された2015年より後の2016年改正で刷られたはずなのに旧フォントが存在することは時系列的に変です。マクロン廃止と神戸三宮改称には対応できているので、最初から新フォントで全て刷らなかったのが本当に謎です。

新フォントの急行単体が新フォントではない謎

新フォントの車両の幕回しを撮影していた際、急行単体に限っては英字が旧フォントであることが判明しました。

新フォント幕の急行単体。Sの字が旧フォントになっています。

証拠として一つ下の新フォントの急行梅田幕も掲載します。

今後の課題

・種別単体幕の撮影

特急、直通特急、急行単体は西宮の滞泊で撮れるので比較的楽です。しかし赤胴の普通単体は野球臨の幕回しでしか撮れず難易度が高くなっています。また青胴車の臨時、普通単体は定期では撮れないのでイベント等での表示に期待するしかありません。

 

・新フォントの神戸三宮~須磨停車直通特急幕撮影

現行幕の一番下にある旧停車駅の黄直特幕は私の知る限りでは記録に残っていません。

 

・新フォントの準急幕撮影

こちらもイベントでしか撮影できません。

20231120追記 新フォント旧フォントの違いの原因として有力な説

旧フォントと新フォントの違いの有力な説として方向幕の書き換え説が浮上しました。阪神の方向幕は従来コイト製でした。しかし近年では「近鉄車両エンジニアリング」が製造していると言われています。証拠として近鉄車両エンジニアリングの取引先一覧には確かに阪神電気鉄道株式会社と書かれています。

www.kre-net.co.jp

また真偽は不明ですが2017年に阪神の方向幕が近鉄車両エンジニアリング製が存在するとのツイートも投稿されています。

ところで近鉄車両エンジニアリングのホームページに興味深い記述があります。既存の方向幕に修正、追記することでダイヤ改正に対応するというのです。

www.kre-net.co.jp

そこで思いついたのが旧、新フォントの違い=流用品と新品の違いではないかという説です。赤胴車において新フォントが出たのは2016年改正以降。下の対照表を見る通り2016年改正では大幅な更新が行われています。

これが新旧の対照表。左が2016年以前、右が2016年改正対応幕です。オレンジ地の部分は2016年改正で消せる種別行先、緑地の種別行先が2016年で追加した種別行先です。ここで注目したいのが新旧で統一している幕。貸切、試運転、直通特急姫路、直通特急御影、直通特急阪神梅田、回送、急行西宮、急行甲子園、急行梅田の9コマがあります。このコマたちは位置を大幅に変える必要のない貸切、試運転となぜか同じ位置にある直通特急御影を除き、使用頻度が高いという共通点があります。そして先述した近鉄車両エンジニアリングのページにこのような記述があります。

「もちろん、すべての貯蔵品を再利用できるわけではありません。例えば、頻繁に表に出るのは「回送」という表示。その段だけが太陽光の紫外線により色褪せたり、破れやすくなっていたりすることもあります。しっかり「再利用できるかどうか」を当社で判断し、貯蔵品を活かす方法を模索しました。

仮に2016年以前の幕を再利用する場合、回送や特急梅田といった使用頻度の高いコマの状態が良くないと再利用、すなわち書き換えができないと解釈できます。逆説的に言えば使用頻度の高いコマを書き換えなければ再利用できる可能性が上がるとも解釈できます。
また近鉄車両エンジニアリングのページでの事例は恐らく2007年の高野山(下)連絡のコマ追加を指しており空白コマへの追加自体は2016年時点でも技術的に可能であったと考えられます。*4

www.rzf.jp

参考:2010年の調査で変化した部分は全て追記であることがわかります。

現在この説を裏付ける確実な証拠はありませんが近鉄車両エンジニアリングが現在幕を刷っていることだけでも頭の片隅に入れていただけると幸いです。

 

最後になりますがこの1年間で幕鉄界隈ではこの違いがすっかり浸透し二種類の幕を掲載してくださる方が増えました。ありがとうございます。

https://senjumakuled.web.fc2.com/hanshin/8000maku.html

hyuga209led.wiki.fc2.com

また界隈外の方にも認知して頂けて嬉しく思います。

ltdexp.hatenablog.jp

*1:ただし青胴車で2015年の目撃が上がっている以上、予備品等で2016年改正以前の内容で新フォントが使われている幕が存在することを否定できません

*2:阪神梅田と姫路もMが含まれますがMでの判断はわかりづらいので位置関係で判断できる方法を載せています。

*3:KŌBEやKŌSHIENのように伸ばす音の時にOやUの上につく横棒のこと。阪神では2014年のLED車の三宮改称対応を皮切りに順次廃止されています

*4:ただし空白コマへの追記自体はカッティングシートを用いた方法などで昔から行われていました。